窃盗物語2006年10月26日 23時54分33秒

押さえ込み~

脱ぎたて服はとりあえず押さえ込む。


普段は非常に穏やか、というより状況を把握するのに時間がかかるためにすばやい反応ができないワタシ。
でも、こんなワタシなのに・・・派出所の椅子を投げて暴れようかと思ったくらいお巡りさんに対してキレたことがある。
もうちょっとで逮捕されていたかもしれませんわ。ほほ。


それはもう10年も前のこと。
ぴぐモンを拾ったものの、ぴぐモンの元飼い主のことが気になるワタシでありました。

ぴぐモンを捨てて、その後で猫を飼っていたところまでは調べがついている。
そういう理解しがたいヤツであるから、「その犬はうちの犬です。返して」と言ってくるかもしれない。
なぜなら、ぴぐモンは世界で一番かわいい犬だし。(←すでにこちらも理解しがたいお仲間である)


その頃、犬に関する本を読んでいたら、気になる記述があった。
「野良犬を保護して1年。大事に飼っていたが元の飼い主が現れた。返してほしいと言うが情が移っていて手放したくない」
この場合、元飼い主に返さなくてはならないのだそうだ。
でも、警察に拾得物として届けていて、半年経っていたら返さなくていいのだという。


では、さっそく警察に届けなくてはいけない、と思ったのです。
近くの交番に、トコトコと出かけていきました。

お巡りさんに言ったわけです。
「犬を拾ったので、拾得物の届けがしたいです」

するとお巡りさんは、眉をしかめた。
「はあー? 犬を拾った? 拾得物? どういう犬ですか?」
「雑種です」

「雑種ー?」

あとでつらつら考えると、このお巡りさんは、ワタシの言うことを全然信用していなかったわけですね。
それもそのはず。
犬を拾って警察に届けるような人は、まず、いないのだ。
しかも雑種の犬。
ありえねー、のだ。

そうなると考えられることはただ一つ。

こいつは血統書つきの値段が高い犬を盗んで、それを自分の物にしようとしている。
犯罪者だ。

「拾った日はいつですか」

ここでワタシは、「早く半年経ってほしい」と思ったばかりに、ウソをついてしまいました。
ほんとは7月なのに、2月です、と言ってしまったのです。
そしたらすでに半年じゃん、というアサハカさ。
でも、必要な期間は届けを出してから半年であって、拾ってから半年ではありませんから。


すでに犯人の取り調べと思っているお巡りさんvsでたらめこいているワタシという不毛な対決がはじまったというわけです。


「2月。あんたね、それ窃盗だよ」

ええ~~っ!

「2週間以内に届けないと、窃盗だから」

ええ~~っ! 
かわいそうな家なき犬を保護して、窃盗!
ぶち切れるワタシ。

「2月と言ったのは間違いです。拾ったのは5日前です」
2週間以内ならいいんでしょー? 

「そういうのを虚偽の証言っていうんだよ。ほんとはいつ手に入れたの」
「5日前」

ワタシも切れているがお巡りさんも切れている。
「そういうことではまったく信用性がないんだよ!」
「だってほんとにそうなんです!」(←ちがうけど)


というような、馬鹿なやりとりがあれこれあった末、早く不愉快なことを終わらせたいので、ふってみた。
「拾得物の届けはどうしたらいいんですか?プンプン!」

「じゃ、住所、電話、氏名、生年月日!」
って藁半紙の裏じゃん。
ただのメモかよ!

「住所はー、○○番地」
「あんたねー、その住所、団地でしょ。犬なんか飼えないよ。公団に連絡しておくから」
「やれば。で、半年経ったら正式にうちの犬なんですね? そうなんですね!」
「まだそんなこと言っているのか!」

ついにもう一人のお巡りさんが割って入り、「そうですから、そうですから。もう帰っていいですよ」と言うので、つまずいた振りをしてパイプ椅子をガチャガチャ蹴って帰ってきた、というのが馬鹿な思い出の一つとなっていて、なつかしくもなんともない。



半年後、雨の中をさまよっていたテロテアさんが保護された。
テロテアさんのうちでも、正式に自分の犬にするために、届けを出そうとした。
とりあえず、警察に電話をした。

「迷い犬を保護したんですけど、うちで飼おうと思います。拾得物の届けはどこで出すんですか?」

電話の相手はこう答えたそうだ。
「飼おうと思われるんですか。もう届けはいいです。あなたのものです」


おいおい、ずいぶん対応が違うんでないの?