モノ屋敷 ゴミ屋敷 62010年02月06日 22時09分41秒

義母はかつて料亭に勤めていたし、食堂をやっていたこともあった。
料理することが好きなのだ。
保存食を作るのも好きだ。

ずいぶん前のことだが、義母から不気味なビンをもらった。
茶色いインスタントコーヒーのビンだったので、中身がよく見えない。
フタの代わりにビニール袋が輪ゴムでとめてあり、ビニール袋は油とホコリでぺたぺたしている。
「ヒル酒はからだにいいからね」
ヒ、ヒル? ヒルってあれですか? ミミズのお友達?
怖すぎる。うちで捨てよう・・・。と思って持って帰り、しみじみ見てみると中はニンニクだった。
「蒜酒」だったのね。

中身がわかったから捨てることはしなかったものの、そのまま放置。
私は一生このビンとは無縁だろうと思っていた。

あるとき、私は風邪をひき、尋常ではない悪寒に襲われた。
どんな薬も飲み物も、私を助けてくれないという確信に震えていると・・・。
ふと、棚の汚いビンに目がいった。
「私を救ってくれるのはこれしかない!」
本能的にそう思った。
ヒル酒をほんの少し湯飲みに入れて、熱いお湯を注ぎ、飲み干した。
その直後、私のからだはポカポカ暖かくなったのだった。
「た、助かった・・・!」

今では、私がヒル酒を仕込んでいる。
黒砂糖も入れて、飲みやすくしてるのだが、最近あまり風邪をひかなくなってしまったので出番がなく、めちゃくちゃ熟成している(はずだ)。


モノがあふれる台所をきれいに清潔に保つことはむずかしい。
義母の流し台にはいつも洗い物があふれていて、なかなかハードな状況になっていた。
北海道で暮らす義妹が、久しぶりに沖縄に来て、義母のアパートに行ったことがある。
義妹は必要最低限のモノしか持たないタイプなので、非常に驚いてしまった。
うちに来てまくし立てた。
「何あれ! あれじゃテレビでやってるゴミ屋敷じゃない! あんなところで暮らすなんて信じられない!」
沖縄在住組は、目を伏せて肩を落とした。
まったく同感なのだが手をこまねいているわけで、反論もできず黙ってため息をつくだけだった。
「それにあのきったない台所! ぞっとする! あの台所で作ったものを食べるなんて!」
義妹は怒りのあまり、目の前にあった煮物をがばがば食べた。
私たち沖縄在住組は、ますます身を縮めた。

義妹が食べている煮物は、義母が作ったものだったのだ。 
真相を知らなければ案外食べられるんだなあ・・・とますます無口になる私たちだった。