心を閉ざした野良犬を拾う方法を伝授する2005年10月01日 23時03分30秒

見るからにきたない犬
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野良犬時代のギャオス。
よそを見ているふりをしているが、実はこちらを意識している。


夕方のニュース番組を見ていたら、どこかの道路際に何ヶ月も住み着いている犬のことを紹介していた。

近所の人たちが心配して餌をあげているのだが、警戒して人に近づかず、誰にもなつかず、保護しようとしても逃げてしまうという。
何回かその番組で追跡調査しているらしく、その日は、保護しようとして檻をしかけたものの逃げられ、ついに姿を現さなくなった犬を探して、草むらを棒でかき分けているところがテレビに映っていた。

ああああ、ばかばか、なにやってんだよー。
素人はしょうがないなあ、と深くため息をつく私。

いいですか、みなさん。

野良犬は、多かれ少なかれ、心に傷を持っているのです。

捨てられた悲しい思いがあり、さらに野良犬になってからは、いじめられたり邪険にされたりしているのですよ。
「この人は一緒にいてくれるかな?」と何度も期待して、そのたびに空振りを繰り返していると、ついに「もう期待してはいけないんだ」と心を閉ざしてしまうのです。

そういう状態の犬に対して、むやみに近づいたり捕まえようとするのは言語道断であります。
保護したいのなら、犬が逃げない距離まで近づいて、犬の方を見ずにじっと座っていてください。

何日かそうやっていると、逃げない距離が少しずつ縮まっていって、ある時向こうから近づいてきてくれるかもしれません。
犬は本来、群のなかで暮らすことを望んでいるのですから、まず安心できると解ってもらわなくてはいけません。

犬が安心していないうちに、目を見ることはタブー。
とにかく、無害であることをアピールするのです。


ケースその1・ギャオスの場合

実家のギャオスも、絶望の中で心を固く閉ざした犬だった。
一定の距離を保ち、決して触れさせない。
餌をやってもほとんど食べない。
したがって保護できない。

ただ、同じ場所に毎日のように来るので、来ると餌と水を置き、さりげなくこちらの姿を見せていた。

2か月ほど経ったある日、「今日はあの犬が来ていない。車にひかれたかな」と思いながら、犬の来るあたりに座ってぼーっとしていると、斜め後ろから「フンフンフン・・・」と匂いを嗅ぎながら近づいてくる気配があった。
「く、来る・・・」

ここで振り返ったらまた遠くに行ってしまう。
体を固くして犬が近づくのを待った。

ちらっと横目で見ると、犬は地面の匂いを必死で嗅ぎながら、決して顔を上げずに近づいてこようとしていた。
地面に興味があるのであって、人に近づいているわけではありませんよオーラをびんびん出している。

ついに最接近して私の匂いを嗅いでいたが、そのうち片足をあげておしっこをかける仕草をした。
それからあとは早かったな。

洞穴のような無表情の目をした、痩せこけて泥だらけの野良犬が、あっという間に、まんまるお目目の甘えんぼデブ犬になってしまいましたよ。

9に守られて2005年10月02日 21時35分18秒

9パンと仲間たち
「映画 日本国憲法」を見てきました。
憲法9条が、日本だけでなく世界の国々にとってどんなに大切なものなのかがよくわかる映画でした。
9条が、戦後の日本(及び近隣諸国)に与えてくれた希望と安心。
私の体の中にも9条が優しく住んでいるような気がして、両腕で自分を抱きしめながら映画を見ていました。

というわけで、今日は例のパン種を使って「9パン」を焼いてみました。

ところで。
パン種が何か別の物に変化してきたみたいなんです。
アルコールの匂いと言うより、ぬかみそくさい。
パンの焼き上がりが固い。
焼き上がりの格好が悪い。
食べると酸っぱい。

さすが天然酵母。やるなおぬし。
と、感心していてもしかたない。
パン種を保存しておくのは、私には難しいのかもしれません。

レーズン酵母が発酵したら、使い切ってしまうことにしようかな。

今日また、レーズン酵母を仕込みます。

心を閉ざした野良犬を拾う方法を伝授する-第2弾2005年10月03日 23時30分06秒

保護したてのヒナゴン
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保護した次の日のヒナゴン


ケースその2・ヒナゴンの場合

夜9時、スーパーから帰って、エレベーターホールに足を踏み入れると、そこに小さな犬がいた。
「あっ、迷子かな」
駆け寄ってなでようとすると「ガウッ」と噛もうとする。
非常におびえているのだ。

ああ、どうしよう。ここはエレベーターホールだから人がしょっちゅう出入りする。おびえた勢いで誰かを噛んでしまったら大事になってしまうよ。

困っていると、ここウルトラ団地に住んでいる高校生が通りかかった。
「何してるの?」
「犬がいるんだけど怖がっていて近づけないの」
「しょーがないなー。おばさんどいてて」

彼は、エレベーターホールに入ると、犬に語りかけた。
「ぽち、どうしたんだ。こんなところで。おなかすいてないか。ぽち・・・」

犬の様子を見ながらほんの少しだけ進む。
犬がいやがるそぶりをちょっとでも見せたら、惜しげもなく下がる。
優しい優しい声で話しかけながら。

近づいたり離れたり、事態がなかなか進展しないので、私は家に戻って連絡を待つことにした。

「身柄確保!」の連絡が来た時は、すでに12時を回っていた。

行ってみると、犬は彼にしっかりと抱かれて思いっきり甘えている。

「えっ、これ、さっきと同じ犬なの?」
と思わず確かめてしまったほど、顔つきが違う。毛のつやもピカピカできれいな色になっている。
さっきは体全体でおびえていたのだろう。

彼が犬とかなり近づいた頃には、ギャラリーも数人集まっていて、「今だ、捕まえろ!」などと声援が飛んだそうだが、彼は「まだまだ」とギャラリーを制したとのことだ。

そして、完全に安心したのを見極めて差し伸べた手に、犬が身を預けてきたのだという。

保護した犬がどうなったかは明日に続きます。

犬たちを運ぶ2005年10月04日 23時49分03秒

ヒナゴンとギャオス
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ヒナゴン(♀)とギャオス(♂)
(保護して2か月後)

ばるタンは、ひっきりなしに際限なく犬を保護していると思われそうですが、それは全然違うんですよ。

犬も猫も、「自分が飼う」あるいは「飼う人を責任持って捜す。探せない場合は自分が飼う」という覚悟がなければ、保護してはいけません。
生半可な同情で、ちょっと優しくして、「じゃあね。元気でね」では、野良さんの絶望をより深くするだけですから。

今のところ、犬の神様がうまく配分してくれているらしく、ばるタンが保護できた犬は、それぞれが新しい家族のもとへ行き、必要以上にかわいがられて暮らしていますので安心してくださいね。

ヒナゴンを保護したとき、びっくりしたことがあります。
「沖縄には野良犬がいっぱいいるよ。一匹拾ってあげる」と、故郷の友達に話したとき、「じゃあ拾って。小さくてメスで、足が短い犬がいいな」と言われていたのです。

条件ぴったし!
友達のうちに行くために、私の目の前に現れた犬としか言いようがありません。

もう一つ、ぴったしな事があります。
保護した日の2週間後、故郷に帰る予定があり、飛行機のチケットをゲットしていたのです。
手荷物で運べばいいのです。

なんてグッドなタイミングなんでしょう、と犬の神様に感謝していたら、その3日後、「実家で飼ってもらえないかな」と思っていたギャオスを保護してしまったのでした。

手荷物で運ぶ犬が2匹になったのです。

すいません。また明日に続きます。

通りすがりの人を号泣させつつ犬を運ぶ2005年10月05日 23時18分45秒

イタイケ犬(ぶりっこともいう)
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手足はどこにあるのかわからないくらい
イタイケなギャオス

最近、定額料金でペットを飛行機に乗せることができるようになりました。
ペットがお客様として認知されている感じになったのか、ペットを連れて旅行する人が増えたので、今までの方式がめんどくさくなったのか、どっちかですね。
ギャオスとヒナゴンを運んだ頃は、キャリーごと重量を計って、1キロいくらで計算するので完全に荷物扱いでした。

さて、安売りしていた小さいキャリーを2つ買い、古タオルを敷いて飛行機の準備OK。
いやがるギャオスとヒナゴンをむりやり詰め込み、2つのキャリーをカートに積み重ねて搭乗手続きをするのですが、これがなかなか大変です。

人の手続きはあっち、キャリーの重さを計るのはこっち、お支払いはそっち。
あっちでもこっちでもそっちでも並ばなくてはいけません。

犬を乗せたカートをガラガラ引いて、やっと手荷物窓口にたどり着いたときはほっとしました。

窓口で、搭乗券を見せて手続きをしていると、通りすがりの若い女性が話しかけてきました。
「かわいいわんちゃんですね。飛行機に乗せるんですか?」
「はい。手荷物扱いで貨物室で運ばれます」
「え~っ! 貨物室! かわいそうじゃないですか」
彼女の両目からみるみる涙があふれてきました。
「こ、このわんちゃん・・。ち、ち、チワワですか?」
泣きながら聞くなよ。
「いえ、雑種ですよ」
「え~っ! 雑種! こ、こんなにかわいいのに・・うっうっ・・に、二匹はきょ、きょうだいですか?」
「いえ、バラバラに拾ったんです。二匹とも捨て犬でした。新しい飼い主のところに運ぶんです」
「え~っ! 捨て犬! ひ、ひどい、捨てるなんて・・・で、でもこれから幸せになるんですね~、あ、あ、あなたたちよかったね~、うっうっうっ・・・」

窓口に積み重ねたキャリーの横にしゃがみ込んで大泣きされても・・・。

しかたないので、その場を離れましたが、振り返っても振り返っても、その女性はハンカチを顔に当てながらキャリーの側に座っていました。

また続きます。
なかなか新しい飼い主と出会えなくてごめんなさい。