王さまの子どもになってあげる2005年11月03日 23時48分31秒

pyoさんが本の紹介をなさっていたので、私も子どもの頃読んだ本の話をします。

さとうよしみ『王さまの子どもになってあげる』

時代は「ALWAYS八丁堀の夕日」とでもいいましょうか、平和憲法の下で生きる喜びが、素直にあふれていた頃に書かれた短編だと思います。

戦争ばかりしていた王さまが、散歩の途中で神様と出会い、「子どもがほしい」とお願いします。

神様は、「生まれる前の子どもたちに聞いてみましょう。王さまは、必ず昼寝をしてください。夢で子どもたちの会議を見ることができます」と言うのです。

王さまが昼寝をすると、そこは子どもたちの会議場。
ほとんどの子が、「王さまは戦争ばかりしてきたので、王さまの子どもになるのはいやです」と主張する中で、ひとりの子が「王さまはもう二度と戦争をしないと思います。だから僕は王さまの子どもになってあげます」と言ってくれるのです。

喜んだ王さまが、また散歩をしていると、遠くから砲弾の音が聞こえます。
隣の国が攻めてきたのです。
でも、王さまは「もう二度と戦争はしないぞ。攻めてこられても、戦争をしないで負けよう」と思うのです。


小学生の頃に読んだ短いお話です。
妙に長い題名と、戦争をしないで負けることを選んだ王さまの印象が深かったので、自衛のための軍備、などという新聞記事を目にするたびに、心の隅で「王さまー!」と呼んでしまうのでした。

でも、誰が書いたのかもわからないし、時代も変わっちゃったし、多分もう誰にも読まれないお話になっているのかも、と思っていました。

ある日、ラジオを聞いていたら、ポップスベストテンの時間なのに、「さとうよしみ生誕100年記念事業・童謡童話劇『王さまの子どもになってあげる』をお送りします」と言い出すではありませんか。

大分県竹田市に記念館もある有名な人だったのです。

それもそのはず、いぬのおまわりさん、アイスクリームのうた、などの作詞者でした。

その童話劇を聞きながら、今もなお『王さまの子どもになってあげる』のお話が、子供たちに親しまれているんだなあ、ととてもうれしく、心から安堵しました。

佐藤義美記念館より『王さまの子どもになってあげる』
http://ww35.tiki.ne.jp/~yosimi/osamaweb.htm