「あの子」のできるまで2008年08月22日 12時20分28秒

今度の猫(名前はまだない)は、団地内の公園で暮らすホームレスキャッツの中の一匹でした。

やってきてはいなくなり、生まれては死に、団地の地域猫は増減を繰り返しながら代替わりしていきます。
ぴぐモンとの散歩で、地域猫を見かけることはあっても、なるべく目の焦点を合わさないようにしておりました。
固体識別ができてしまうと、情が移りますからね。
地域猫の皆様のご無事を、陰ながら祈るだけの日和見、責任回避です。


でも、この猫だけは、注意深く避けていた固体識別に至ってしまった。。。。
それは、数ヶ月前にさかのぼります。
肉体労働バイトのまっただ中でしたので、5月下旬頃のこと。


夜、がらモンが「廊下で猫の声がする」と言い出したのです。

うちは団地の高層階。
猫が廊下で鳴く事態がそもそもありえません。
猫はエレベーターのボタンを押せないし、「メタボ対策のために、階段を使いましょう」と思う猫は存在しないはず。
ニャオスのような出会い(犬がいる高層階の部屋に勝手に入ってきていた)は、百年に一度あるかないかのことでしょう。

では確かめてみましょう、と、ドアを細く開けて、廊下を見ようとしたその時、黒い小さな固まりがダッシュしてきて私の足元から玄関に突入しようとするではありませんか。

「うわあ、いた! だめだめ!入っちゃだめ!」

えいえい、と足で蹴り出す。

何で? 何で? 犬がいるし、スケ番みたいなコワい猫もいるのに、どうしてこの部屋を選んで入ろうとするの????
ここんちは、すでに犬と猫で手一杯。
それに私は、慣れないバイトでイッパイイッパイなんですよ。
必死で足の隙間から入ろうとしていた猫は、ドアが鼻先で閉められてしまったので、今度は必死で鳴きはじめました。
漠然と鳴くのではなく、明らかにわが家に向かって鳴いています。

しかたなく、団地の公園に連れて行って、置いてくることにしました。
ドアから出ると、喜んでスリスリしながらミャーミャー鳴く・・・。
それをむんずと掴んで、エレベーターを降りました。

初めて明るいところで、猫を見たのですが、「何だか変な顔だなあ」と思いました。
体の色は焦げ茶なのですが、顔は真っ黒で、まちがって頭から黒いペンキをかぶったようです。
「よしよし、ほらいつもネンネしてるところでしょ」と、公園でポイっと捨てました。

「一緒にいて!一緒にいて!」
猫は鳴きながら私の周りをクルクル回って、どこにも行かせないようにします。

足早にそこを離れようとしますが、猫の方が敏捷で、私の足の前に回り込んでしまうのです。
「一緒に行く!一緒に行く!」

公園からエレベーターホールまでを、何往復したことか・・・・。
エレベーターの中まで、追っかけてきます。

ついに、エレベーターのドアが閉まる直前に猫を蹴り出し、なんとか自分だけが部屋に戻ることができました。
これで一安心。


でも、その時すでに、変な顔をした黒い顔の猫は、「地域猫」から「あの子」になっていたのです。
以下次号。