本「終末のフール」伊坂幸太郎2011年04月15日 22時17分27秒

伊坂幸太郎の本はわりあいよく読んでいますよ。

登場人物たちの関係性がさっぱりわからない導入部分とか。
ちょい役かと思えば、重要な人だったりするので、軽く読み飛ばさないほうがお得なところとか。

「終末のフール」がどんなお話かというと、巨大隕石が落ちてくることがわかり、地球滅亡まであと数年という設定。
仙台のような町の、高台に建っている小さなマンションの住民たちの物語です。

滅亡するということがわかって、人々は荒れ狂う。
強奪や殺人が横行した時期を過ぎ、町は小さな落ち着きを取り戻している。
滅亡の日が一日一日近づいている中で、何を思い、どう暮らすのか、というテーマです。
短編集なので読みやすい。
じーんとしたりホロリとしたり安堵したり感極まったりしました。

滅亡の時には、大きな津波が来て、どこも水没するだろうとのこと。
それをこの本で読んだとき、高台のマンションまで水没させるような津波を、頭で想像しました。
私の想像は、全然甘っちょろかったです。

滅亡を前にして、無秩序になってしまう世界は、想像するのも恐かったので、ちょっと焦点をずらして読んでいたのです。
作家のイマジネーションってすごいな~と思いながら。


でも、大震災のとき、現実の人々がきちんと秩序を保ったエピソードの数々は、感動的な本よりも感動的であります。

停電で信号の消えた道路は大渋滞。おまわりさんの誘導もない。だけど、交差点では譲り合って一台ずつ通ったのだそうです。

今は節電でエレベーターも止まっている駅。本数も減って混雑するので、電車に乗る人々は階段の下できちんと並んでいるのだそうです。
ホームは階段の上なので、電車が着いたら降りる人たちが階段を下りてくる。全員が降りきったら、電車に乗る人たちが整然と上っていくシステムになっているのだとか。
自然発生的にそうなったのだそうです。

そんな現実のエピソードを少しずつ積み上げて暮らすのが私の幸せです。
たとえ滅亡の日が近づいていてもね。