本「朽ちていった命」 ― 2008年10月16日 17時18分07秒
レジ業務のクライマックスは、精算です。
担当した時間内で、いくら売れたかがわかりますし、過不足があったかどうかが判明します。
最近のスーパーでは、自動的にお釣りのお札がピョッと飛び出し、小銭がチャラ~と出てくるレジのマシンが増えてきました。
でも、私のアルバイト先のレジスターは、お釣りの金額を教えてはくれますが、お札や小銭を自力で数えなくてはならない普通のマシンです。
もらったお金の入力を間違えることも、お釣りを間違えることも可能です。
過不足を出そうと懸命に努力しながらレジに立っているわけではありません。
むしろ逆なんですけど、時々どうしても過不足が発生します。
そうなると、店長が始末書を持って飛んでくるので、書かなくてはなりません。
だけど、過不足を出した理由って言われても、ねえ。
私は、すれた大人なので、そこは適当に書きますが。
うちに帰ってから、がらモンに、「『過不足発生の理由:人間だもの』って書いたらだめかな」
がらモン「『年だもの』って書いたら?」
それはリアルすぎるので却下。
私は、思うのです。
自分の小さなミスが、誰かの命にかかわるような仕事でなくてよかった・・・と。
たとえば、航空管制官。
「あっ、こっちから来る。あっちからも来ちゃう。わーもうわかんない」となるのは必至です。
そして、たとえば原発関連の作業員。
それもまたリアルすぎてどう表現したらいいかまったくわかりません。
こんな本を読みました。
「朽ちていった命 被爆治療83日間の記録」NHK「東海村臨界事故」取材班
新潮文庫
1999年の秋、東海村の核燃料加工施設で、ウラン溶液を移し替える際に臨界事故が発生、二人の作業員の方が被爆して亡くなりました。
この本は、一番間近で放射線を浴びた方の治療の様子が書かれています。
私は、テレビのニュースで、病院に運ばれる場面を見ました。
まるで宇宙服を着たような人たちはお医者さんたちだとのこと。
ストレッチャーごと覆ったテントの中に患者さんがいるようでした。
この患者さんは、これからずっとテントの中なの?
体から放射線が出るの?
ご家族もそばに寄れないのか?
と、思った記憶があります。
でも、臨界事故では放射能を浴びるのではなく、中性子線(放射線)がすべてのものを突き抜けるのだそうです。
ですので、二次被爆を恐れて、宇宙服のようなものを着て治療する必要はなかったとのこと。
このあたりは、私は実に知識がありません。
放射能というと、見えない灰のようなものかと思っていました・・・。
この本を読んで、いろいろなことがわかりました。
最高の治療の甲斐なく、患者さんは亡くなってしまうのですが、それは放射線を浴びたことによって、染色体がめちゃくちゃになるからでした。
染色体にはすべての遺伝情報が書き込まれています。
たとえば、擦りむいた皮膚が再生する、というような設計図です。
これが壊れてしまうので、皮膚は再生しません。
どんな病気や怪我でも、体は常に「治ろう」としているはずです。
でも、その基本的なことを破壊するのが放射線なんです。
今までに、いくつかヒロシマやナガサキの本を読んできました。
被爆して亡くなった人の様子が書かれた本も読んできました。
ああ、あの人たちも、こうやって亡くなっていったんだ、とはっきりわかるのが、この本でした。
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