初めての「スローバラード」 ― 2009年06月15日 00時19分18秒
またまたキヨシローの思い出でございます。
高校の頃、ふと気がつくと、どこの友達のうちでもテーブルでご飯を食べるようになっていた。
だけど、うちではずっと座卓。冬は掘り炬燵。
ご飯は家族揃って食べる。
昭和だなあ・・・。
日曜日は、みんなで夕飯を食べたあと、みんなでNHK大河ドラマを見る。
うちでは、チャンネルを変える権利は姉だけが持っていた。
ほかの家族は全員、「自分がチャンネルを変えるなんておこがましい」と心の底から思っていたので、争議にはならない。
大河ドラマが終わったあと、姉がチャンネルを回した。
偶然か、姉が見ようとした番組だったのかわからないが、変な声で歌うグループが映った。
「あっ、RCサクセションだ!」
放送が始まったばかりのテレビ神奈川。
ヤングインパルスという公開生放送の番組に、RCがレギュラーで出演していたのでした。
それから毎週、大河ドラマが終わると「それっ」とばかりにテレビ神奈川を見るようになった。
RCは10分か15分をそっくり持たされていて、3曲歌う。
おかっぱ頭に鉢巻きを巻いたキヨシローは、とてもかわいかった。
祖母は耳と目が悪かったので、大河ドラマをテレビの至近距離で見ていたのだが、その続きでキヨシローもかぶりつきだ。
「かわいげな。男か、女か」
「男だよ~。キヨシローっていうんだよ」
そのかわいげな男が、軽いおしゃべりをしたと思うと、歌い出すとアレである。
鉢巻きから汗が伝って、涙のように流れる熱唱だ。
「泣きょおる。かわいそうになあ。キヨシロー・・・」
もしかして、祖母が一番のファンだったかも。
RCは、自分が持たされた時間を、実に自由に好き放題に使っていた。
たとえば、「ラジオは音が途絶えると放送事故だが、テレビは映ってさえいたら放送事故ではない」と言って短い曲を3曲やり、あとは黙ったまま映っていたことがあった。
アイデアはすごいんですけど、「キヨシロー、歌わんのか?」と不思議がっている祖母に説明しづらい。
だいたい、「ヤングインパルス」なのに、「ヤングインポルノ」と言うし。
毎週毎週、「そう来たか! よくやるよ・・・」と呆れたり笑ったりした。
コミックバンドかと思えば、歌い出すとアレである。
(ずっとあとになって、RCやタイマーズがテレビ番組で物議をかもすことがあったが、当時のヤングインパルスを見ていた人にとっては、デジャヴみたいなものです)
そこで初めて「スローバラード」を聞いたときのことを覚えている。
♪きのうは車の中で寝た♪とキヨシローが歌ったとき、会場は大笑い。我が家でも大笑いだったのだ。
どうせこいつは、家を閉め出されて、寝るところがなかったんだな、と思ったからだ。
それまで、自転車の歌を多く歌っていたから、車に乗っているとは誰一人(?)想像しなかった。
曲が終わったとき、全員「あっ私は今何を聞いたんだ?」ときょとんとした。
すごいのを聞いちゃったことはわかるんだけど、どうリアクションしたらいいのかがわからない。
分類に困る歌と言いましょうか。
今なら「キヨシローの歌」と分類すればいいんですけどね。
「ぼくの自転車の後ろに乗りなよ」も、牧歌的な裏声で始まって、突然ハードになる。
そのたびに、80歳目前の祖母も高校生の私も「ああ・・」とため息をついていたものだ。
もし、私が祖母の年まで生きることができたら、きっとそのときもまだ、キヨシローを好きなのだろうな。
さて、キヨシローへのインタビューで、とても印象深かったやりとりを書きます。
インタビューの意図とは答えがずれているんですけどね。
Q「まちがいない、オレの子だ」と確信するのはどんな瞬間ですか
A「眠るときもいっしょにいるし、朝、目覚めたときからいるのだから、それでいいのだ。もしもオレの子じゃなくても、もうオレの子だよ」
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