眼鏡がほしい2007年04月09日 23時16分43秒

この団地に引っ越してきたときは、東側の丘はすべて緑濃い森だった。
夏になると、森の中から立ち上る水蒸気が空に上がっていた。
一日に何度か必ずスコールがあり、それはいつも東側からやってくるのだった。
私の部屋は東向きなので、雨が丘を走って降りて来て、まっすぐに団地に向かってくるのがよく見えた。


バブルの頃、丘がどんどん宅地になっていった。
家々が丘の下から上に広がっていく様子を毎日見ていた。
今では、森がほとんど残っていない。
夏のスコールも数えるほどしか降らない。


地面を冷やし、植物に潤いを与えていたスコールがなくなったので、地熱は夏の間上がり続けてしまう。
「沖縄はスコールがあるんだなあ」と当然のように思っていたが、森が生む豊富な水分がもたらしてくれるものだったのだ。


元々、この団地も、小さな丘と森をつぶして建てたものだ。
だから、森を宅地に変えることに対して文句をいう資格は全然ない。
でも、せめて植物に対して畏敬の気持ちを持ちましょうよ、というくらいは主張してもいいよね。


二酸化炭素と酸素が見える眼鏡があれば、はっきりわかるだろう。
大きな木、小さな木、道の草、そしてサンゴが、せっせと二酸化炭素を酸素に変えてくれていることを。
私たちが大切にしなくてはならないのは、二酸化炭素を放出するだけの爆弾ではなく、健やかな命に必要な緑の木々だ。