防空壕2007年04月04日 23時53分14秒

私の母は戦時中の女学生で、勤労奉仕のためにほとんど授業が受けられなかった世代です。

母の学年はおとなしい少女が多く、先生の言うことには「しかたない」と従っていたそうです。
でも、母たちの一学年上には、個性の強い少女が多かったとのこと。

たとえば。
朝礼で戦意高揚の歌を歌うときに起立しない。歌わない。
千人針を頼まれても、絶対にやらない。

良心的起立拒否、良心的千人針拒否をしていたのですね~。



沖縄に来る前のことですが、「近代日本美術の歴史」がテーマの展覧会に行きました。
明治から現代まで、その時代の代表作が展示されていました。

西洋絵画を必死で取り入れようとしている明治初期。
労働者の姿がキャンバスに現れる大正時代。
大御所も若造も、前衛とサイケに走った70年代。

どの時代も興味深かったのですが、使われる色がどーんと暗くなり描かれる姿がリアルになるのが戦争絵画です。
落下傘部隊の絵とか、山下大将が「イエスかノーか」と迫っている場面など、モノクロの写真としか思えません。

戦争絵画は、わかりやすい絵なのですが、やはり重苦しいです。

でも、その中に一枚、光がこぼれてくるような明るい絵がありました。

どこか南の国の乙女が、色とりどりに咲き乱れる花のアーチをくぐり、こちらに一歩足を踏み出したところの絵です。
美しい布を腰に巻いた清らかな乙女です。

色も内容も暗い絵を見てきたので、みんなその絵の前で足を止め、思わずにっこりしてしまうのでした。

で、ふと気がつくわけです。
「あり? これが戦争絵画? ここは戦争絵画のコーナーだよね・・・」

近づいて、絵の題名が書かれたプレートを見ると、なんとその絵の題は「防空壕」。
どこが防空壕? お花のアーチの奥に、ちょっとだけ洞穴のようなものが見えなくもないですが・・・・。

もしかして、軍部から依頼されたのが「防空壕」の絵???
それで、描き上げたのが健康美あふれる乙女の絵????

良心的防空壕拒否ってか????


作者名は忘れてしまいましたが、あの生命力に満ちた乙女のことは忘れられません。

コメント

_ さくら子 ― 2007年04月06日 21時42分05秒

戦場から帰った方が絵を描いて悲惨を訴え続けられました。その方は今度生まれてくるときはいろんな色を使って絵を描きたいと言われたそうです。
その方の描く絵は、すべて黒と赤で描かれていました。

絵描きさん達も自分の表現ができないことが、どんなにか苦しかったことでしょうね。

_ KIRICKLAND ― 2007年04月06日 23時01分22秒

香月泰男さんの絵を思い出しました。いわゆる「シベリアシリーズ」です。
反面にあるブリキの、たくさん残っているオモチャ。
半可通ながら、絵筆を取れば「シベリア」なってしまうのかも、と思いました。
水木しげるさんはその点、独特ですね。

_ ばるタン ― 2007年04月07日 00時44分11秒

>さくら子さん

同じ人かな? 日曜美術館で見ました。
抽象と具象の中間みたいな感じではありませんか?
でも、最後の5分間くらいしか見ていない・・・。



>KIRICKLANDさん

香月泰男さんという方を初めて知りました。
美術館もあるんですね。

水木さんは、鬼畜米英とか思ったことがあるのかなあ・・。
勝手な想像ですが、なさそうな気がします。

_ さくら子 ― 2007年04月07日 11時29分08秒

桧山高雄さん(?)でしたか、下のポスターの写真を描かれている方だったと思うのですが…。
http://www.ne.jp/asahi/tyuukiren/web-site/action/320ivent.htm

_ ばるタン ― 2007年04月08日 00時10分09秒

>さくら子さん

あ~、私の思っている人と違うみたいです~。
日本画の人だと思います~。
それにしても、そそられるイベントがずらりと並んでいますね。

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