良い本? 悪い本?2005年10月29日 10時43分08秒

高校生の頃、小さな図書室のお手伝いをしたことがある。
公民館に併設されている、子供用の図書室だ。

その頃、子供たちに人気だった本は、「復刻版のらくろ」。

のらくろワールドは、軍隊だし、時代背景が古いし、子供たちがどれだけ理解していたかは不明である。でも、わかりやすい絵とわかりやすいコマ運びandほかに漫画の本がなかったこともあり、大人気のぼろぼろ本になっていた。

それからもう一つ、正しい名称は忘れてしまったのだが、一般ぴーぷるの思い出を集めたシリーズがあり、これがのらくろと競うくらいの人気だった。

私もお手伝いの合間に、そのシリーズの何冊かを手にとってみた。

おねしょにまつわる思い出を集めた本。

おねしょをしてしまったときの気持ち、しないように努力している子供の気持ちが書かれている。
これは、子供たちにとっては、たまらないだろう。
まるで自分のことのように、息を詰めて読んでいる子供がいるもんなあ。
思い出話を一つ読み終わると、「はぁぁぁ~」とため息をついたりしているもんなあ。

おねしょをしない子の思い出も、その本にあった。
自分はおねしょをしないんだけど、お姉ちゃんがいつもおねしょをして叱られているので、なんとか自分もやらなくてはいけないと思い、布団の中で必死におしっこをしようとした話だった。

このシリーズが、子供たちに人気なのも当然だ。


・・・・でも、実は、図書室で静かに本を読んでいる子が、突然「わーん!」と泣き出すことがある。
別に誰かに苛められているわけでもなさそうなので、泣かせておく(ほったらかし^^;)のだが、思い返してみると、泣いている子の持っているのは同じ本だったような気が・・・。

それは、このシリーズの中の一冊で、飼っていた動物にまつわる思い出を集めた本なのだ。

読んでみてビックリした。

その多くが、「戦争で別れなければならなくなった動物との思い出」だった。

大事にしていた農耕馬を軍隊に供出させられる話。
前の晩、きれいに体を藁でこすって、何度もお礼を言って一緒に寝た馬が、乱暴に引き立てられていく・・。

満州で、ソ連兵が攻めてくるというので、とるものもとりあえず逃げる家族。
飼っていた犬は連れていけないので、つないだまま。いつまでも聞こえてくる犬の声の思い出・・・。

気がつくと、子供たちが私を取り囲んでいて、
「泣いてる・・」「ハナも出てる・・」「おとななのに・・」などと口々に言っているではないか。

しかたないので、「だ、だからぁ・・戦争はダメなのっ! 戦争は絶対にダメっ! わかったか!」と無理矢理にその場を収めた。

それからというもの、その本を手に取る子供には、余計なことだが「すっごく悲しいよ。泣いちゃうかもよ」と言わずにはいられなかった。

おねしょの本はともかく、動物の本は子供にとっていかがなものか。
ショックが大きすぎるのではないか。
それとも戦争のむごさを子供に知ってもらうために適切な本なのだろうか。
子供に読んでもらいたい本なのか読ませたくない本なのか・・。

何十年経っても、私の結論は出ていない。

ただ、あの時叫んだ「戦争はダメなのっ!」が、年月を経るごとに、ますます大きな思いになっているだけだ。